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【書評】「ラグビー日本代表を変えた『心の鍛え方』」

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  • 書籍名:ラグビー日本代表を変えた『心の鍛え方』
  • 著者名:荒木香織

 

ラグビー日本代表を支えたメンタリティーはどのようにして作られたのか

ラグビーの世界で四年に一度開催される国際的トーナメント
にワールドカップがあります。

 

1987年に第一回大会がニュージーランドで開催されましたが、
1930年に第一回のワールドカップが開催されたサッカーと比
べると歴史の浅い大会となっています。

 

ラグビーの日本代表も第一回のワールドカップから参加してい
ましたが、世界の強豪にまったく歯の立たない戦績でした。

 

2015年の英国で開催された第八回大会で、優勝候補の一角を
占めていた南アフリカを34-32で破り、「史上最大の番狂わせ」
と賞賛されました。

 

この日本代表を率いたのが、オーストラリア人のエディー・
ジョーンズという人物ですが、彼のスタッフでメンタルコーチ
を務めていたのが著者の荒木氏です。

 

国際舞台でなかなか勝利できず、メンタル面の弱さが常に指
摘されてきた日本代表でしたが、どのようにしてあの劇的な
勝利をもぎ取る精神力の強さをつけたのかが書かれています。

 

まず荒木氏は、始めて日本代表の選手に接した時、彼らに対
して、自らが代表という地位を勝ち取ったのではなく、周囲
の人たちから日本代表として扱われていたという印象を持ち
ました。

 

そのため、練習も誰かに言われたからやっているため主体性
もなく、その結果として、チームの一体感も欠けていたと分
析しています。

 

しかし、著者は、メンタルは鍛えることができると言っています。

 

そのためにポイントして

  • 目標を立てること
  • 自信を持つこと
  • パニックにならない

 

目標を立てること

オリンピックでメダルを獲得できた選手と獲得できなかった
選手の差についての研究があります。

この研究では、「過程に関する目標を持って練習に臨んでい
たかどうかが大きな分かれ目となる」ことが明らかとなり、
目標を立てるのも、一流選手のスキルの一つとして必要です。


一流選手は、自分の実力を正しく把握しているので、立てら
れる目標も適切なものになります。

そのため、目標達成に向けて健全なな心理状態で取り組めます。

周囲の期待もプレッシャーとは感じず、自分を励ますものだと
受け止めます。また、失敗しても良い経験をしたととらえ、
失敗を栄養にし、着実に目標に向かって進んでいけます。


しかし、二流選手は、どの程度の目標をどのように立てて、
いかに遂行していけば良いかというスキルに欠ける傾向があ
ります。

また、自分の実力を客観的に評価できず、必要以上に高すぎ
る目標を掲げてしまう傾向があります。

こうなると、規制が起きない限り、どう頑張っても目標を達
成できず、もがき苦しむことになります。

そういう状態が続くと、いつしか周囲の期待を「励まし」で
はなく、「プレッシャー」に感じるようになります。

さらに、失敗をしたくないから、失敗を避けようともします。

 

このように著者は、目標を立てることの重要さを力説してい
ますが、かならずしもその目標にこだわりすぎず、目標の内
容を変える、あるいは達成のアプローチを変える柔軟性も必
要と言っています。

これを「やめることの大切さ」と言っています。自分の心と
体の現状を理解しつつ、目標に向かって行動を「維持・変化・
停止」させるのも、パフォーマンス向上には大切なスキルです。

 

エディー・ジョーンズ監督も練習で、選手が「もうちょっと
やたらできそう」と感じた時点で練習を止めていたそうです。

そうすることで、次の日も選手が頑張ることが出来るのです。

 

 

自信を持つこと

格上の相手と対戦すると、どうしても相手に「呑まれる」こ
とがあります。

こうなると、本来のパフォーマンスを発揮できなくなります。

そのときに大切になるのが、「自信」です。

 

スポーツ心理学では、自信のことを「自己効力感」と呼び
ますが、自己効力感をを高めるには、成功した体験が重要
と理論的に証明されています。

つまり、うまういったこと、成功したことを覚えてくシス
テムを自分の中につくっておき、そういう体験を重ねてい
くと、良い結果につながり、自信がついていきます。


それは、どんな小さな事でも良く、成功体験を積み重ねて
いくことで、自信がつき、積極性も生まれます。


著者はまた、自信がある人になる方法として次の三つをあ
げています。

  • 自信があるように振る舞う。
  • セルフトーク:自分で信じている言葉を自分自身に
    かけて取り組む
  • 繰り返し練習する

 

 

パニックにならない

試合中に想定外のことが起こったり、自分が思ったような
プレーができなくなると、選手は時としてパニックに陥る
場合があります。

 

著者は、試合においてベストのパフォーマンスを発揮する
ためには、フィジカルの不安(心拍数が増えてどきどきす
る、呼吸が荒くなるなど)と、メンタルの不安(ストレス、
恐怖感など)を最善の状態にするべく、うまくコントロー
ルすることが大切と言っています。


つまり、自分がどんな状態であれば良いパフォーマンスが
できるのかを知っておくことです。


ただ、メンタル面のコントロールは、平常心でいるという
ことではありません。

平常心とは、「興奮の度合いが低く、不安をあまり感じて
いない状態」を指します。しかし、そういう状態で行われ
たパフォーマンスは、実は最も完成度が低く、むしろ、
適度に興奮し、不安もある程度抱えている状態の方は良い
パフォーマンスが出来ると言われています。


また、自分でコントロールできない、変えられない事に対
して気を揉んでも何の解決にもならない。

時間とエネルギーを浪費するだけです。


著者は、日記は自分の精神の状態の変化がわかるので、
日記をつけることを奨めています。

自分がどんなときに腹が立つか、どういう状態の時にいら
いらすることが多いか、その時どんな気持ちになったか、
どうしたかということを振り返って、書き出し、覚えておく。

次にそういう時にどうやってリラックスするか、あらかじめ
行動を決めておく。

大事なのは何をすればリラックスできるかを自分で理解して
おくこと。

なんとなくではなく、意識的にリラックスすることです。

 


プレッシャーやストレスへの対応方法

試合で極度のプレッシャーや不安にさらされると、練習で
は出来ていたことが出来なくなり、パフォーマンスが悲劇
的に悪くなります。こうした状態を「チョーキング」
(ゴルフでは「イップス」)と呼ばれます。


これは、スキルを遂行することに集中しすぎるため、(そ
のことを考えすぎるあまり)、パフォーマンスを行うため
のワーキング・メモリーの多くが消費され呈しまい、脳の
容量が減少して、自動的にプレーすることが出来るなくな
るためだからです。

 

著者は、プレッシャーはなくなるものではないので、それ
を受け入れ、プレッシャーの中で意志決定する経験を積む
必要性を強調しています。

 

また、 プレッシャーというのは、見ることも出来ないし、
触ることも出来ない。要は本人の受け止め方の問題だとも
言っています。

 

それでも不安になる場合は、

  • 一回、または二〜三回ゆっくりと深い息をする。
    大切なのは「落ち着くために深呼吸するのだ」と意識
    すること。無意識にするのとでは効果が異なる。
  • 注意や集中を自分の内から外へ変える。これはミスを
    防ぐ上でも非常に有効。
  • 自分自身にポジティブな言葉をかける。
  • 考え得る限りのシチュエーションを想定し、徹底的に
    シミュレーションしておく。
  • 自分がコントロールできないことを気にしない。例え
    ば、他人のミスは、自分でコントロールできるもので
    はない。


漠然とした不安に襲われたときは、何が不安なのかを確かめ、
可視化することが大切です。

 

著者によれば、ストレスとは、「自分が出来ると思っている
こと」と「やらなければいけないこと」の差によって生じます。

このため、「ストレスが溜まっている」と感じたとき、何がス
トレスになっているかを解きほぐし、その原因を探して一つ一
つ対応することが肝心です。

 

最後に、著者は「環境は自分で作っていくしかない。自分が変
わらなかったら、何も変わらない。そういうプロアクティブ
(率先的)な行動を取らないで、ただ待っているだけでは
「もっと」と望んでも得られるものではない」と言っています。

 

 

最後に

 

本日の記事はいかがでしたか。

 

ラグビーというスポーツが題材になっていますが、あなたが
チームの運営する立場であれば、メンバーがどのような精神
状態にあるのかを理解しておくのは、チームのパフォーマン
スを高める点でも重要です。